フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズは、コロナ禍のなかスケートカナダとフランス杯が中止となり、6戦のうち4戦が行われた。得点はあくまで参考記録のため単純に比較はできないが、国際スケート連盟主催の冠大会に向けて集中して挑んだ試合だったことに間違いはない。GP4戦を振り返ると、今季女子の新たな潮流が見えてくる。
各大会での上位者の得点をまず見てみる。NHK杯は坂本花織が229.51点で優勝。樋口新葉がトリプルアクセルをqマーク(4分の1回転不足)ながら着氷し、200.98点で2位となった。
ロシア杯は、トリプルアクセルを決めたエリザベータ・トゥクタミシェワが223.39点で優勝。アリョーナ・コストルナヤはトリプルアクセルを封印し、220.78点での2位。アレクサンドラ・トゥルソワは、4回転のミスが多く198.93点での4位となった。またスケートアメリカはマライア・ベルが212.73点で優勝だった。
フィギュアスケートの理想はこれなんだという演技
国内ジャッジによる参考記録とはいえ、グランプリ4戦を通じて坂本が今季女子の世界最高得点となったことは、大きな意義がある。その武器は“トータルパッケージ”だ。トリプルアクセルや4回転は入れずに、ジャンプなどエレメンツ1つ1つのクオリティを上げることで加点を稼ぎ、プログラム全体の完成度を高めて演技構成点も高く評価された。
これは羽生結弦が世界で初めて300点超えを果たした時の演技と、非常に似通った部分がある。当時、羽生のコーチ、ブライアン・オーサーはこう語っていた。
「これが、このフィギュアスケートという競技で目指すもっとも理想の演技です。質の高いジャンプ、完ぺきなエレメンツの数々、そして最初から最後までトータルパッケージにすることで芸術の領域に踏み込んでいくのです。フィギュアスケートの理想はこれなんだという演技を、体現してくれました」
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