芸術家二人が創作活動と地域交流をしている横須賀市田浦泉町のアーティスト村で、陶芸家の薬王寺太一さん(45)が「穴窯」を使った陶器づくりをした。村内のワークショップや小学校の総合学習で作られた作品を含む約四百点が、薪を五日間燃やして完成。約六十人が「窯出し」を見守り、焼き上がった作品に歓声を上げた。 (村松権主麿)
十一月二十六日午後七時に始まった「窯たき」は、地元の間伐材など約三トンの薪を用意し、住民らも協力して薪を燃やし続けた。窯の温度は一二三〇度に達し、十二月一日夕に火を落とすと、温度が徐々に下がるのを待った。
六日の窯出しでは、茶わんや皿、動物の置物などバラエティーに富んだ作品が手渡しで出され、ずらりと並べられた。村と滋賀県・信楽の土を混ぜた土は、焼くと茶褐色の濃さが増し、かかった灰で緑や白みの風合いも出た。
自分の作品を見つけた人は「あれ私の」と指をさし、周囲からは「すてきね」「かわいい」という声も。近くに住む橋本順子さん(67)は小さな花瓶を手のひらで包み、「まだ暖かい。金属っぽい光沢があり、渋くて味がある。思ったより縮み、イメージ通りいかないですね」とほほ笑んだ。
茶わんを手にした田中三佐子さん(71)は、村で活動する現代美術家、山本愛子さん(29)の染色ワークショップにも参加。「田浦の自然を生かした二人の活動で人と人がじわりじわりとつながり、これまでと違う田浦になる気がする」と目を細めた。
市の募集に応じ、二年前に工房と住居を構えた薬王寺さん。住民らと造った穴窯を使い、作品を焼いたのは二回目。窯出しを終え、汗をぬぐうと「失敗できないというプレッシャーもあったけど、無事に焼き上がって良かった」と安堵(あんど)。自身は縄文式土器をイメージした作品などを焼いたが、「土の配合、たき方、灰のかかり方など改良の余地は多い。穴窯に『これで完成』というのはない」と早くも次回に思いをはせた。
<アーティスト村> 横須賀市は、細い道が入り組んだ「谷戸(やと)」と呼ばれる丘陵と谷地でコミュニティー再生のモデル事業を行っており、自然豊かな谷地にある同村では、旧市営住宅を改修して芸術家を誘致。2018年11月に薬王寺さんが、20年4月に山本さんが活動を始め、来春には作家の折原みとさん(56)が加わる予定。
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December 11, 2020 at 05:13AM
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「穴窯」で陶器焼けた 横須賀・アーティスト村 参加者「自然生かし、人をつなぐ」 - 東京新聞
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