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宝塚劇団員死亡「労働者守らぬ体質が招いた」 パワハラ被害の元裏方 - 毎日新聞

宝塚大劇場=兵庫県宝塚市で、水津聡子撮影 拡大
宝塚大劇場=兵庫県宝塚市で、水津聡子撮影

 宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)の劇団員の女性が死亡した問題で、西宮労働基準監督署が22日、歌劇団に立ち入り調査した。歌劇団によると、数日前に予告があり、労働基準法などの法令に基づき、組織の体制、労働時間の管理方法、勤務実態などの聞き取りを受けた。歌劇団は「今後も指示があれば、真摯(しんし)に対応したい」とコメントした。

 死亡した劇団員の女性はフリーランスという形式で、歌劇団とは雇用契約(労働契約)ではなく、業務委託契約を結んでいた。弁護士チームがまとめた調査報告書は、死亡直前1カ月に118時間の「時間外労働」があったと試算し、長時間の業務などにより心理的負荷がかかっていた可能性を指摘した。歌劇団の木場健之(こばけんし)理事長も14日の記者会見で「安全配慮義務を果たせなかった」と言及した。

 一方、歌劇団は入団5年目までの劇団員や一部のスタッフとの間では雇用契約を結んでおり、労務管理の責任や安全配慮義務も負っている。労基署が何らかの法令違反を指摘する可能性もある。

新人に裁量労働制 1カ月休めず

 舞台に立つ劇団員だけでなく、裏方からも長時間労働や上司からのハラスメントを訴える声が上がる。元スタッフの男性は、歌劇団の労務管理のあり方を批判し「労働者を守らない体質が招いた結果だ」と憤る。

 この男性は数年前、契約社員として入団。未経験の新人だったが、歌劇団と交わした雇用契約では、1日実働8時間を基準とする専門業務型裁量労働制となっていた。しかし、実態は舞台制作に携わる上司の指示で雑用をこなす仕事。1カ月以上も休みがなく、深夜まで業務が続く日々だった。上司からの暴言で精神的に追い詰められ、体調不良を理由に退団を余儀なくされた。

 専門業務型裁量労働制は19業務について、労働者が仕事の進め方や時間の使い方を決めることを前提に、労使で事前に設定した時間を働いたとみなす制度だ。しかし、長時間労働を招き、残業代不払いの温床になるとの批判も根強い。仕事に不慣れな新入社員は適用を除外すべきだという考え方もある。

 男性は入団直後から「新人で、上からの指示で雑用をする仕事ばかりなのに、裁量労働制はおかしい。いくら働いても給与は同じだった」と疑問を抱いていた。しかし突然、歌劇団側から未払いだった残業代が過去にさかのぼって支給された。退団後に元同僚から制度が変わったと知らされた。

「見て見ぬふり」「口止め」も

 ハラスメント対応のずさんさも指摘する。男性は、上司から「辞めてまえ」「仕事できへんな」などと、繰り返し暴言を浴びたと訴える。歌劇団の各組で制作を統括するプロデューサーが目撃した時もあったが、見て見ぬ振りだったという。「歌劇団内で相談できる人はいなかった。(運営する)阪急電鉄に相談窓口があったのかもしれないが、遠すぎて相談しようとも思えなかった」と明かす。

 歌劇団の隠蔽(いんぺい)体質も批判する。退団時に歌劇団幹部から「ボーナスを支払うから辞めた経緯は一切他言しないように」と念押しされたという。「隠しても世に出てしまう。これからの宝塚のことを考えるなら根本的に変えてほしい。世間では通用しない常識や上下関係を見直すべきだ」と改善を求めた。【松室花実、水津聡子】

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