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大坂なおみの直感vs.アザレンカの論理 コーチを巡る決勝のドラマと逆転劇の「ひらめき」(山口奈緒美) - Number Web - ナンバー

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 7枚の抗議マスクを全て見せ終えても、大坂なおみは最後まで大きな仕事をやりきった。

 81位、74位、137位、21位、93位、41位、そして27位――1回戦から勝ってきた相手の中にトップ20の選手は1人もいない。それはこのコロナ禍で開催された異例ずくめの大会が、いかにトップ選手にとって出場することも勝ち上がることも難しかったかということを物語っている。

 しかし、だからといってビクトリア・アザレンカとの決勝の価値も、その優勝の価値も一切下がりはしないだろう。

 ともにグランドスラム優勝を過去に2度経験した、世代の違う2人の元女王。そして強いメッセージ性を持った2人だった。大坂は「アスリートである前に1人の黒人女性」と言って人種差別に抗議する強い姿勢を、アザレンカは「母親であると同時にテニスプレーヤーであり続ける」という生き方を、その戦いを通して見せていた。

 また、2人の軌跡を知る者には、さまざまな意味でより味わい深いものだっただろう。それぞれの低迷と復活の物語があり、因縁があり、そこにはコーチのウィム・フィセッテも深く絡んでいたからだ。

2016年全豪での対戦と、敗戦の弁

 大坂がグランドスラムで初めて予選を勝ち上がって四大大会デビューを果たした、2016年の全豪オープン。当時まだ世界ランク127位の18歳だった大坂は3回戦まで進出し、ここで1-6、1-6と完敗した相手がアザレンカだった。

「可能性を持った選手だと思う。とてもパワーがあるし。この先、彼女はもっといろいろと見せてくれるはずよ」

 アザレンカの感想は、あの頃すでに他のトッププレーヤーも抱いていたものだと思われるが、大坂の敗戦の弁には少し驚かされたものだ。

「正直言うと、負けて良かったってちょっと思うの。負けて学ぶことのほうが、勝って学ぶことよりも多いから」

【次ページ】 フィテッセは当時アザレンカのコーチだった

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